ss0776 死にたくない
 胎児の肢は、運命づけられているかのように、定まった場所で定まった数の細胞が定まった時期に正しく死ぬことにより、肢に正常に分かれた指が出来る。

《ボクは死にたくないんだ》
《わかっているよ、心配しなくいい、君が必要となったんだ》
《ボクが社会のために必要に!?》
《そうだよ、そのまま育ってくれていいよ》
《嬉しい》

「おぎゃ〜おぎゃ〜」
「まあ、かわいい、あら、この子指が六本も有るわ」
「なに驚いてるの? その子の家系は代々本来六本の指ができる家系だったのよ、今までは胎児の段階で初期の肢の余分な堤を電気メスで殺して来たから正常に五本指の子が生まれていたのよ」
「この適者適合病院って…、そういうことだったのね」
「そうよ、人間の宇宙適合進化なんて待ってられないのよ、逆に指の少ない子も作っているわよ」
「そう…、今は…」
「そうよ、今は電気メスでなんてめんどくさくてやってられないわ」

《ボクは死にたくないんだ》
《だめだ、死ね》
《ボクは、いや、ボクたちは社会のために不必要になったんだね》
《そうだ、お前らは自殺しろ》

 他者を生かすアポトーシス遺伝子は、発見されてしまった。