「大昔の人は、昼間働いて、夜寝ていたんだな」
「そうね、そのパターンしかなかったみたいよ、信じられないわよね」
「時差ぼけってなんだ? それから、方向音痴ってなんだ?」
「さあ、なんでしょう? 昔の人はサーカディアン・リズムをコントロール出来なかったみたいよ」
「サーカディアン・リズムをコントロール出来ないようじゃ、現代社会は生きてゆけないぞ」
「そうよね、現代は宇宙時代真っ只中よ、地球時間以外の様々な時間で生活して、色々な時間で働いて、色々な時間で寝て、目印の乏しい宇宙空間とかでも活動していかなければいけないのに、そんな変な地球特有の時間感覚や位置感覚なんか守っていたら宇宙時代を生きていくのに障害になるわ」
「そうだよな、それにぼくらは、これからどの星に派遣されてゆくかわからない、しがない派遣社員だしな」
「そうそう、その派遣会社の本部から、最近変な電波が出ているってうわさ知らない?」
「あ、知ってる知ってる。それ、ぼくも聞いているよ、なんでもそのサーカディアン・リズムを狂わす怪電波だってうわさだ」
「そうなのよ、それを浴びた派遣社員は自分で設定した時間感覚、方向感覚を狂わされ、うまく目的地に行けなくなり、地球に帰ってくる事もできなくなってしまうようなのよ、でも、報道規制が暗黙に地球政府と交わされていて、報道しないようにしているようなのよ」
「ひどいな、いくら不況とはいえ、死のリストラ宇宙空間ダイブかよ」
「また、大昔の話だけどさ、地球には昔ハトという鳥が居て、毎年大規模なハトレースが開かれていたそうなんだけど、ハトを物凄く遠くに正確に旅させて、手紙や物を届けさせ、また戻って来るようなことを競わせていたんだけどさ…」
「知っているよ、最近その史実を暴露し始めた報道局があるんだよね、当時の携帯電話とかの強い電波、電磁波でハトは目的地に行けず、もちろん、巣にも帰って来れなくなって、長年続いていたハトレースは封印されてしまったんだって…」
「そうなのよ、でも、その強力な電磁波の影響はハトだけじゃなく、その他の生きものたちだけじゃなく、人間のサーカディアン・リズムをも狂わす危険な電磁波だったのに、当時の人間は利便性や経済性の方を選んで、その報道をも封印させてしまったわ」
「日本の大阪を中心に精神活動面からの携帯電話を廃止する動きもあったけど… 小学生まで止まりだったみたいだよな」
「携帯電話は今では、脳波と連動できる様になっていて、個々人のサーカディアン・リズムをもコントロールできるアイテムにまで進化しているわ。基本は自分で設定するようになっているけれど、やりようによっては今回の様に電波で他人を操る事も容易に出来てしまう時代なのよね…」