ss0697 魅惑のスープ
「原始の地球の素材たっぷりの魅惑のスープから、生物は生まれたという説があるけど、ほんとうかしら?」
「地球上の生物の遺伝子は、種は違っても共通の言語で書かれている」
「つまり、たった一つの命しか最初はなかったか、それしか成功しなかったという事ね」
「いや、宇宙から、彗星からなんどもその共通言語を持つウイルスが降り注いでいるという説がある。地球の大気の上層部には歴代の彗星たちが残していったウイルスだらけで、浮遊していて、現在では鳥がわざわざそれを取りに行って、感染してくるという事だ」
「まあ、そうすると他の星の生物もみんな同じ遺伝子なのかしら、あたしたちと互換性があるのね、二重螺旋の巻く方向は宇宙人も地球人もみんな同じ方向なのね」
「魅惑のスープに引き寄せられてやつらはやってくるんだ」
「生物って、肥溜めに集まるハエのようなものだったのね」
「… そ、そうだな、魅惑のスープだよな、肥溜めって」
「生物生物って偉そうにすることないのよ、蛆虫も人間も変わらないわ、ただ生きているだけでしょ、そして星の寿命と一緒に消えてしまって、生きていた証なんてなんにも残らないのよ、星から星に渡り歩いて命を繋いだって、宇宙にだって終わりは来るのよ」
「おまえ、さみしいやつだな」