ss0663 ベム
「生物的に診ると人間って、ものすごく変わった形の生物なんですってね」
「そうみたいね、直立して立って歩くし、頭は大きくて重いし毛皮は無いし、野生で生きるには物凄く脆弱な生き物だわ」
「やっぱり人間は宇宙から来たのかしら? 重力の軽い星からとか」
「遺伝子から察するに、人間はどっぷり地球上の生物よ、チンパンジーなんかとは99%近くもの遺伝子が同じよ」
「そうか…、じゃ、もしかして人間はチンパンジーの奇形児の子孫って事かしら?」
「そう考えるのが妥当ね、進化や退化は徐々に起こるものではなく、突然起こるもののようだからね」
「人間はチンパンジーの赤ちゃんより未熟な段階で産まれて来るから、母親にそうとうの母性本能がなければ子孫を繋いで行けないわ」
「そうね、そう考えると人間はたいしたものだわ、愛があるのよ」
「人間はチンパンジーの奇形児の子孫って事だとすると、人間がさらに進化するには、今度は人間から生まれる奇形児を大切に育てて可能性を探るということかしら」
「そうね、サバン症候群の人たちなんか次の人類候補かもよ、彼らがコンピューターと物理的にリンク出来るようになれば地球の文明のあらゆるシステムを管理出来るようになるわ、そもそも本来人間の脳はこんなにコンパクトなのに、莫大な電気と場所を捕るスーパーコンピューター以上の容量と速度をもっているわ」
「サバン症候群の人たちはすでにコンピューター的なものごとの処理をしているものね、見たもの聞いたものを全て記録していって、絶対忘れない。そして瞬時に正確にその記録をちょっとしたキーワードだけで引き出せるからね」
「二進法が標準になるわね、手の指も二本になったりして」
「そうよ、脳機能を専門化して生理部分や意味のない思考を減らしたり、肉体機能を単純化するというのも無駄を省いて効率的になるという、立派な進化だからね」
「やっぱり我々が想像する未来人って、怪物みたいな宇宙人なんだわ」
「そうね、気持ち悪いベムって感じよね」

「今、こっちを見ているチンパンジーからしたら、人間がその気持ち悪いベムって感じなのよ、きっと」