ss0623 手
「これは驚いた、チンパンジーやボノボの系統のサル以外でも、三点以上の道具を組み合わせて目的を達成出来るとは…」
「フサオマキザルのヤシの実割りのことだな、ヤシの実を入念に手入れした台座に置き、割り石を複雑に微妙に操作して割って食べることが出来るんだよな。素晴らしい」
「まてまて君達、鳥類の事を忘れていやしないか? ほとんどの鳥はくちばしに小枝などの道具を咥えて、木の中の虫を器用に釣って食べたりする事が出来る能力があるんだぞ、特にカラスの仲間は物凄い」
「そうだな、昔の研究者はおかしいよな、こんなに日常茶飯事に鳥は道具を使って色々な事をしているのに、道具を使えるのは人間だけだなんて、奇妙な神話的格言を唱え続けていたんだもんな」
「鳥に我々人間の手のようなものを遺伝子操作して付けたり、機械式の手を付けたりしたら、物凄い事をやってのけてしまうんだろうな」
「だろうな、イルカなんかにも手を付けてみたいな、大脳の皺なんか見ると人間のと変わらないからな」
「じゃ、付けてみるか」

「おのおのみんな凄い文明文化を築いてしまったな」
「手からの刺激が脳を活性化して、あっという間に、たった数世代で人間クラスにまでなってしまうとは… それに鳥類は人間の言葉を流暢に話せるからまたやっかいだ」
「地球上での人間の地位が危ないな」

「ここはひとつ、手を増やして対抗するしかあるまい」
「ついに人間は千手観音となる日が来たのですね」
「そうだ、人間は神様になるんだ」
「彼らも追っ手来るんじゃ?」
「手えぇ…」