ss0621 時間変化調節機
「君、動物にしてはちょっと動きがどんくさくないか?」
「そうかな、君のほうがきびきび動きすぎなんだよ、植物のくせに」
「はははは、お互いに時間変化調節機の設定を微妙に間違えたようだな、僕ら植物は、本来君達動物の時間から見ると止まっている様に見える。だが実は、動作は遅いが激しく動いているんだ。それに現代では土からも開放され、歩く事も出来、この時間変化調節機のおかげでこうして君達動物とも交流がもてるようになった」
「そうそう、僕ら動物はこの時間変化調節機で時間変化を遅らせ、君ら植物は逆に時間変化を早くしてお互いの速度を同程度に調節している。まあ、あくまでも時間変化調節であって、個々の生態だけに影響するだけだから、流れている時間は共通で絶対的なものなんだけどな」
「僕の母体は数千年生きる杉で、意識も精霊的なものだが、この調節のままだと後数年しか生きられない」
「そうか… 僕は逆に後数百年生きるだろう」
「どうやら動きを同程度にすると君達動物のほうが長生きするようだな」
「そうだな、うらやましいか? でも、感じている時間の感覚の長さはどうなんだろう」
「僕の意識と交換して体感してみるかい?」
「今の技術なら出来るだろうけど、そのまま逃走するんだろ? でも、光合成が出来て、自前でエネルギーが作れて生きて行けるのは魅力的だな」
「だろ、じゃ、合体してみるか」

 二人は植物と動物の両方の特徴を持つ単細胞生物のミドリムシとなってしまった。永遠の命は得たが、意識は…。