ss0619 タイムトラブル
「この男かね、タイムトラベルが容易に出来る男は」
「そうです教授。ほんとに簡単にタイムトラベルしますんで、教授もやってみてください」

『ボコン!』
「痛いじゃないか、なにを… あっ」

「こんな、頭を殴っただけでタイムトラベルしてしまうのか?」
「ええ、そうなんです」
「こんな事で過去の任意の日時の記憶が、今現在の脳を支配してしまうんだな」
「ええ、そうなんです。どうやらテスト期間中の中学生に戻ってしまい、勉強を始めました。彼の両親にも協力してもらい彼の家の中をこの研究室に再現しています。あらゆる時代の小物も揃っています」
「もう一度やってみよう」

『ポコン!』
「痛いよ、なにするんだ… なんだあんたらは… あっ」

「おぎゃ〜 おぎゃ〜」
「今度は赤ちゃんまでいっきに戻ってしまったのか… 凄い、脳波まで赤子の状態になっている」
「教授! 早く赤ちゃんの頭頂部を殴ってください!」
「どうしたんだ? ああっ体がどんどん若返ってゆく」

『パコン!』
「ぎゃ〜」

「あぶないところでした。実は脳に合わせて体も変わるようなのです。元の年齢に近ければあまり関係ないのですが、赤ちゃんはさすがに…」
「後頭部を殴ると過去に行き、頭頂部で元に戻るのか?」
「そうですが、力の入れ具合と、微妙な側頭葉への角度も影響するようなのです」
「彼は元々何歳だったんだ?」
「十八歳です。… 今、十八歳に見えませんね」
「我々をじっと見ているぞ、偏光ガラスで向こうからはわからないはずなんだが」
「あっ 彼の脳波を見てください」
「! 彼には未来の記憶も有るのか!! それはいったいどこから来るものなんだ!?」