「犬!」
「犬って、蔑む酷い言葉よね」
「犬はたった数世代でどんな形にも変化させる事が出来て、色んな種を作る事が出来る」
「そうよね、正確には種ではないけれど、今、物凄い数の犬種が人間の趣向に合わせて存在して居るわ」
「彼らにはそうして生きるしか無いのさ、人間に媚びた姿形になってプライドを捨てて生きているんだ」
「そうよね、本当に、本当にこんなに可愛そうな動物は居ないわ。鎖に繋がれて、引き摺り回されて、、、、媚びて尻尾を振るなんて。。。情けない…」
「でも、たまに人間の上に立とうとする奴も居るよな」
「そうね、彼らは群れで生きるのが基本だから、頼りなさそうな飼い主だと、自分がリーダーになって群れを守ろうとする。そうね、それは立派な行為だわ」
「というか、ほんとはみんなリーダーになりたがっているんじゃないのかな。一生人間の下で犬畜生の奴隷生活なんて嫌なのさ」
「そうかもね。それに日本人は犬に友達的、子供的なものを求める傾向が強いけど、それも順位がしっかり決まっている群れで暮らすのが基本の犬にとってはストレスになっているそうよ」
「そうそう、順位があるのが犬にとっては一番安心する事なんだ、そして若さ漲り吠えまくる成犬はトップを目指す。でも、人間はそれを許さない! 当然の如く彼らの口を塞ぎ叱り付ける! 一生人間なんかの下で惨めで不自由な奴隷生活なんて… 嗚呼見てるだけでも可愛そうだよ」
「若い成犬の時だけでも思いを遂げさせてあげたいものね」
「そうだな、たまには人間のほうが犬に合わせた生活をするのも良い筈だ」
こうして現代のお犬様ブームが始まった。血気盛んな若い成犬を躾と称して叱り付けたりした人間には、市中引き回しの上打ち首獄門とされる法律まで出来た。
リーダー犬への媚方も詳細に解明され、リーダーである期間、飼い主はそれを実行しなければならなくなった。
短い犬の生涯はこうしてストレスのない健全なものへとなったのだ。