ss0609 魔法使いが居たころの話
「ここに居るのはみんなまだ、初等科の若い魔法使いばかりね」
「そうさ、我々魔法を極めたエリート魔法使いとは違いすぎる。手加減してやれ」
「でも、手加減するっていうのは、いくら相手が初心者だからといって失礼にあたるわ」
「… そうか、実力の差を見せ付けて、やる気を育むのも先輩魔法使いの役目だからな、よし、行け」
「お願いします。き、綺麗なお姉さん」
「おだてたってだめよ、どもってるじゃない、真剣勝負よ」
「エ、エロエロエッサイム… あっ、間違えた!」
「ま、負けたわ。相手の魔法の全てを無効化する究極の呪文… どこでそれを知ったの? その呪文を言う時の抑揚も真似出来ないほど完璧だわ」
「そ、そんな違うんです」
「凄いじゃないか君、今度は僕が相手だ」
「エ、エロエロエッサイム… あっ、また間違えた!」
「素晴らしい。君は天才だ。僕にはもうなにも出来ない」
「今度は私が相手だ」

『これはやばい事になったぞ、先生だ。呪文を間違えた上に緊張して唱えたというのがばれてしまう』
「どうした行くぞ」
「エ、エ、エロエロ、ドエロエッサイム… あっ、!」

 彼は偶然にも、今まで誰も唱える事の出来なかった禁断の呪文を唱えてしまった。それは魔法使いの全てを"人間"というものに変えてしまう恐ろしい呪文だった。こうして人類の歴史は始まった。