ss0599 誤月
「正月ばかりがもてはやされるが、おまえたち、誤月が有るという事を忘れてはいやしないか?」
「そうですね師匠、陰と陽があってはじめて世界の釣り合いがとれるものですよね」
「師匠! 誤月にはどのような行事をするのでしょうか?」
「師匠! そもそも誤月とはいつなのでしょうか?」
「おまえたち、そんなことも知らないのか? よくそれでこの船に乗れたものじゃ。よく考えてみよ」

「たしか西暦二千年の二月の二十九日は四百年に一度のうるう年でしたね、四年に一度のうるう年では修正しきれない時間を四百年に一度さらに修正するという…」
「そうじゃ、さすがはワシの第一の弟子、シャーリープトラーじゃ。四百年に一度のうるう年を本誤月、四年に一度のうるう年が小誤月じゃ。じゃが、危機が迫っておる…」

「きっちり好きの日本人が宇宙船地球号の運行を任され、一年をきっちり365日の時間で割り切れるように、自転公転させようとしていますね」
「そうじゃ、さすがはワシの第二の弟子。 モンガラナーよ、なんとかせねばならない。誤月を無くしてはならぬのじゃ」
「師匠! 誤月を無くすとなにか大変な事でも起こるのでしょうか?」
「…」
「師匠!」

「わしの最愛の息子のラーフラが、西暦二千年の二月の二十九日に生まれたのは知っておるな」
「はい師匠!」
「四百年に一度の誕生日なんてかわいそうじゃが、それすらも無くなってしまうのじゃよ」
「…」
「…」
「…」