ss0218 追体験
人間は、記憶を断片でしか思い出せない。
「人間は、記憶を断片でしか思い出せないが、脳は全てを記憶しているはずだ」
「脳の殆どは眠ったままで、ほんの数パーセントしか働いていないから、眠っている部分を活用すれば可能かも知れませんね」
「そうなんだ、サバン症候群の人達の協力で加速度的に記憶の研究は進んだ、実はもう研究は最終段階に入った、後は臨床実験だけだ、どうだね君、モルモットになってくれないか?」
「いいですよ、私の過去はエリートコース一直線ですから、過去の記憶の全てを連続して思い出せるという事は、快感な筈です」
「それじゃ… 最初から追体験行ってみようか」
「はい」
「この、脳波は… 人間の脳波ではない、母親のお腹の中で進化を体験しているんだな、こんなところまで遡れるとは…」
「次は胎児の時の安らかな追体験のようだな」
『ぎゃああぁぁああ』
「どうした!! 大丈夫か? 何を追体験しているんだ!?」
「痛い、痛い! 死ぬほど苦しい助けて」
「しまった! 生老病死、産まれる時の苦しみのことを忘れていた… 特に人間の場合は頭の骨が内側に潰れて産まれて来るんだった! しかも追体験なので緩和するホルモンも働かない…」
『うぎゃああぁぁああああー』