ss0056 蜘蛛の糸
蜘蛛は一生懸命糸を紡ぎ、あの複雑な幾何学模様の巣を作っていた。
丹念に、一点の狂いもなく、無類の正確さをもって究極を作っていた。
しなやかに舞い、無駄な動きは一切ない。とどまりや迷いも一切なかった。
そして、まるまる一日もの時間、人間の感覚なら、何百日もの日数をかけた労作が、
今、ようやく完成した。
その素晴らしい、素晴らしい芸術作品は完成したのだ!
「ぎゃ!!」
出来たばかりの… その素晴らしい芸術作品に、さっそくごちそうの蝶が引っかかった。
「バカヤロウ! なんてことしやがるんだ!!」
と、蜘蛛は怒鳴った。