ss0055 普通の街

 その街には奇妙な体付きの宇宙人たちが蔓延って居た。
「先祖帰りした毛むくじゃらの人間。一つ目の巨人。頭だけが肥大化した人間。途中から二人になっている人間。顔が三つある釈迦顔人間… 人類も随分変わってしまったものだな… 色も形も、そして心までも変わってしまっている。この街に来る度に未来の宇宙人街に来た気分になる」
「うん、そうね怖いわ、いつ来ても慣れない。私も未来の宇宙人街に来た気分だわ、でも先進国はどこでもこんな感じみたいよ。べつに進化が進んだ訳でもないのにね、薬害とか遺伝子エラーとかで生まれた奇形児たちを、進歩し続ける医療の力で救い続け、それを何世代にも渡って手厚く保護し続けたためよ」
「そう、この街では逆に完全に正常な人間を探すのが難しい。外見は正常な人間に似ていても、中身は様々な奇病に侵されている。しかし彼らも医療の進歩の力で生きている」
「人間だけじゃないわ、この街のペットは勿論、動物園の動物や植物園の植物もそうよ」
「しかしこの街に本物の宇宙人が紛れ込んでてもわからないだろうな…
 そうだそれに、地球上にはもはや自然は存在しないようだ。正常な動物園や植物園もだ…」
「まさかあなた」
「そういうキミだってそうなんだろ」
「芝居はもういいのね、どこの星も同じね」
「普通の街になってしまった。こうなる前にもっとサンプルがほしかった」
「同感ね、残念よ」