ss0054 ホームレス

 家が無い、ということは悲しむべきことなのだろうか。
「カタツムリは陸に上がった貝として、しっかり成功して生きているよな」
「うん、それに比べてナメクジはなんだかなぁ。貝を持たないから乾燥に弱く、大きさも限られてる」
「おいおい君達、なにか勘違いしてないか」
「えっ、あっどうもどなたか知りませんが、どういうことです?」
「海にいるオーム貝って知っているだろう」
「はい、生きた化石ってやつで原始的なやつですね、子供の頃図鑑で夢中になりました」
「そうだ、それから進化分離して、コウイカっていう少しだけ進化したイカが生まれた」
「えっ、イカは貝の仲間から進化したんですか」
「そうだ、コウイカにはオーム貝と同じ系統の貝のなごりが、背中の中に退化して未だにある」
「もしかして、似たような軟体動物のタコもそうですか」
「そうだ、普通のイカはコウイカよりももっと貝のなごりが小さくなっているし、タコに至ってはもはやそのなごりは消滅してしまっている」
「貝からイカ、イカからタコに高度に進化していった訳ですね」
「そうだ、だからナメクジも立派に陸上で、進化の頂点を走っているんだ」
「おじさん、ホームレスでしょう?」
「ああ、そうだよ」