ss0039 喜怒哀楽
コミュニケーションの基本は、顔の喜怒哀楽だ。
都会の、というか現代の人間は人付き合いが下手だ。本当は人と実際に合ってコミュニケーションを取りたいのに、電話やメールに頼ってしまう。顔の表情も上手く作れなくて、みんな無表情になってきてしまっている。
「社長、出来ました。喜怒哀楽お面です。サングラス気分で着用出来ます」
「うむ、現代人には売れるぞ! このアイテムは社会の貢献にもなる」
それは大人から子供まで大流行し爆発的に売れた。みんなちょっとしたオブラートに包まれたものが欲しかったのだ。全てオーダーメイドなそのお面は自分の顔がディフォルメされており、簡単操作で少し大袈裟な喜怒哀楽を表現出来るようになっていた。これは思惑どうり現代の人間の円滑油と成り得た。
「社長、出来ました。今度は喜怒哀楽お面の子機です」
「うむ、これこそ忙しい現代人には売れるぞ!」
それもまた爆発的に売れた。頭部に最大三つの喜怒哀楽お面は、同時に複数の人とコミュニケーションが出来るお釈迦様タイプだった。
「あっあなた、隣の娘には笑い顔で、どうしてあたしの方には驚いた顔なの!」
「あう…」
複雑になった操作を緩和させるために、三面とも心に正直になったのがたまにきずだった。そしてそれが致命傷になり暫くして再び現代の人間は人付き合いが下手になっていった…