ss0022 寿命
動物園。平凡そうな男女。一人は癌患者だった。
「人間の本当の平均寿命って、37才なんですってね」
「うん、びっくりだよね、他の動物と同じように野生で生きるとそうなる。野生だと食物の確保が大変だし、硬い物ばかりだから30代には歯はぼろぼろで、食事が出来なくなる」
「日本に住めば80才以上生きるから… 2倍から2倍半は寿命が延びるっていうのは凄いわね」
「うん、でも、ほんの3~4世代前の江戸時代の日本人の平均寿命は、野生で生きたのと同じ37才だったそうだよ」
「えっ、人生50年とか、信長の時代から云われていたのに、そんなに低かったの?」
「武士や公家、商人は少数民族で、一般の日本人を代表しているとはいえない。日本人といえば、百姓だったからね」
「ふ~ん、なるほど。ところで彼ら動物はどうなのかしら」
「動物園の動物やペットととして飼われている動物は、やはり野生よりも2倍から2倍半長生きするようだよ」
二人は、その動物園の帰り、交通事故に遭った。故意だったかも知れない。
二人はその病院に居た。
「この脳は160年生き続けている」
「こっちの癌細胞はまだまだ… というか、ここでずっと生き続けるだろう。癌細胞は栄養さえ与えていれば永遠に死ぬことはない」