ss0012 ポジション

 子供から見た世界。自分の職業から見た世界。…その時々の、自分の置かれているポジションからしか感じられないものがある。
「朝起きたら虫になっていたって小説あったよね」
「男女が入れ替わってしまう映画もあった」
「突然自分が自分でなくなるって面白そうだね」
「うん、そうだね、徐々にしか自分のポジションは変えられないし、なりたいものにはそうそうなれない」
「さあ、そろそろ眠ろうか」
「軽く言うね、冷凍睡眠して遠い星まで行くというのに」
「君の夢がかなうということさ、君も僕も別の人間になる」
「そう、人間の思考は単なる脳内の微弱電流の変化でしかない。冷凍睡眠には耐えられず、目覚めた時には電流は消え、白紙の脳になっている」
「そう、そして着いた星で、そこでの作業に適した性格が埋め込まれる」
「これって、ポジションが変わるのではなく…」
「死ぬってことさ」