ss0010 物語

 人生というのはよく物語りに例えられますが、なかなか自分の描く脚本どうりにはいきません。
「なあ、僕達は今日結婚するけど、今は昔の人とは違ってそこそこ幸せに生きることが義務になってしまってる時代だよな、でも、不安とか、絶望とかに興味はないかい?」
「えっ あなた何を言っているの!? 人生設計局に行けばそういう人生も買えるでしょうけど、あなたの給料ではとてもじゃないけど無理だわ」
「うん、そうなんだが、よく聞くじゃないか、不安、絶望の後に設定した幸福がどんなに素晴らしいものなのかって、ああ、一度味わってみたいものだよ」
「そうね… あたしも働いてみようかしら」
 二人は、なんとか不安と絶望は買えましたが、最後の幸福だけが一生かかっても買えませんでした。