ss0002 バイオカウンターマシン

 レトロ調の大きなガラスのドームのあるラボで。
「出来た!! 遂に出来たぞ。全くの無機物から生きものを、つまり死から生を私は創ったのだ!」
「この可愛いい単細胞生物の数を厳密に数える事の出来る、このバイオカウンターマシンで正確に記録しておこう」
「全部で六十兆四億八千九百万飛んで二百十四匹も創造する事が出来たぞ」
「む? これは驚いた。ドームに周期的に弱いストレスを与えると、物凄い勢いで進化していくぞ、ようし、カメラを回しておこう」
「子供を作る度に進化して、かなり高等な多細胞生物になったようだが、ずいぶん数が減ってしまった」
「嗚呼… 遂に雄、雌たったの二匹になってしまった」
「あれ? おかしいな、このマシン壊れたのかな、最初量った数のままだ」
「とうとう一匹になってしまった。う~ん素晴らしい。単純な雌雄同体ではなく、前進的な個体での生殖能力を持っていて、いかなる物質的、精神的ストレスにも耐える事が出来る」
「どうやらこいつがこのドームでの進化の頂点らしいな。子供にはもう進化の方向性はない。しかしおかしいなこれほどの生きものが子供を産んだ瞬間に死んでしまうとは…」
「よし、死体を調べてみよう」
「ばかな! 細胞の数が六十兆四億八千九百万飛んで二百十四個だって!?」
「質量保存の法則… 物質やエネルギーだけでなく、まさか命の数まで不変不滅だというのか!?」

「取材に応じていただきありがとうございます。博士、遂に宇宙世紀元年ですが、何か博士は物凄いご研究をされているそうですね」
 科学雑誌記者がマイクを向ける。
「ええ、まあ… 端的に云いましょう。宇宙に出る時代になり、地球というドームの中で増えるところまで増えた膨大な人間の数が、完全に横這いになり、止まってしまった理由が判ったのです。それは未進化であった他の生物全てを滅ぼしてしまった為なのです。他の生物は身体を失い、人間となったのです。
 そうです。人間は宇宙に出てそこで死んではなりません。それは完全な輪廻の無い死です。地球は閉じた世界なのですから…」
「はあ!?」