ss0001 お肉

 憎々しく太った大外科医院の院長は、何時もの様に部下に手術を任せ、一人で豪華な朝食を捕っていた。
「どうも最近美味いお肉が無いな… 魚は生臭くてその上喰い難いときとるし、鳥はパサパサしとるし、牛なぞは最初の一口だけだ。しかももうみんな喰い厭きたな。
 豚は… 現代西洋医学の先駆者であるドイツ人は、中世、豚肉のバリエーションだけで厳しい冬を耐えていたが、
 そうだな、豚は料理の仕方によってはまだまだ喰えるな、しかし、どうしてなのだろう?
 う~む、、、、
 やはり肉質がどんな生きものより人間に近いからか? 筋肉と脂質の割合といい、蛋白質の種類といい、そして一番重要な柔らかさに至るまで同じだ。それに心臓の大きさ、骨髄から産み出す免疫系も殆ど人間と同じで、豚はよく外科手術の実習に使うし、内科の連中の実験にも使う重要なアイテムだ… つまり豚、豚肉は人間に限りなく近いから厭きずにそれなりに美味いのか…
 ならば本物の人間のお肉は…」

 院長は部下に命じて強引な理由を付けて切除させた、若い女の後肢を一本手に入れた。そして自ら調理した。
「ううっ、ううっ、、美味い、美味すぎる!」
 院長の大きなクレーター顔は常軌を逸し、喜悦する悪魔と化した。この日を境に院長も外科手術の仕事に復帰した事は云うまでもない。


「究極だ! 究極のお肉だ! 美味い! 美味すぎるぞ!! 私の体の中に溶け込んで同化してゆく。完全に私の舌にフィットした究極のお肉だ!」
 半年以上人肉を喰い続け、その中でもより美味い人肉を追い求めた院長は遂に自分自身を調理したのだ。
 薄れゆく意識と伴に…
「おおっ! 死ぬほど美味いぜ!!」